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シュウメイギクと蜂にまつわる思い出

秋明菊(シュウメイギク)

玄関脇のシェードガーデンに4年前に植えたものが、今年は過去最高のつぼみをつけたので楽しみにしていた。しかし長雨にたたられ、咲きそろう前に散ってしまったり。それでも花のない季節に健気に咲いてくれるのは嬉しい。
一般にシュウメイギクといえば一重のものが浮かぶが、これは八重でいかにも「菊」という感じ。フラワーアーティスト高橋永順さんはこの一重の花がお気に入りのようで、作品によく見られる。でも、本来はアレンジメントに使うような豪勢な花ではなく、野にそこはかとなく咲く花。風に吹かれて不安定に揺れる、そのなんともいえない風情が好きだ。
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そのシュウメイギクに先日蜂がとまっていた。さかんに蜜を吸っている。なんか恐ろしそうな蜂だけど、その蜜の吸い方は健気で可愛く見える。チュチュチュチュって何度もくちばしみたいなものを花芯に押し付けて。こっちの花が終わればあっちの花。ずっと見ていると、何だか赤ちゃんがおっぱいを一生懸命吸っている姿が浮かんできた。
シュウメイギクと蜂にまつわる思い出_b0036381_135186.jpg

蜂も赤ちゃんも吸うことによってのみ、命をつなぐことができる。赤ちゃんの場合は、現代では粉ミルクという便利なものもあるが、そんなものがない時代は母乳だけが命綱。だから何もできない生まれたての赤ちゃんにも、吸引反射といって乳首を口にあてがわれたら吸おうとする、生きていくための術が備わっているのだ。

新生児を見たのは、自分の子どもが初めてだった。それは赤ちゃん―やわらかく、丸くぽちゃぽちゃしている―というイメージとはかけはなれていた。単に「息をしている生き物」という感じ。頭は大きいが、新生児用着物にくるまれている手足は壊れそうなほど華奢で小さい。なのに指の1本1本に小さな小さな爪まである。
新陳代謝著しい皮膚は毎日ボロボロと剥けていく。人間の生まれたての姿って、こんなものなんだ、とよくわかった。なんせ少し前までお腹の羊水の中でプカプカ浮いてた生き物なのだ。

授乳をしていると、すーっと眠気に襲われる。こくん、と頭が落ちて、ふと目が覚める。すると生まれて1ヶ月ほどの我が子は、寝ながら母乳を吸っている。目が閉じているのに、口だけ一生懸命動いている。その動きがだんだん遅くなり、やがて止まる。新生児にとって母乳を吸うことは、それは大変な運動量らしい。全身の力を口に集中して吸引するのだ。乳首をくわえたまま、疲れ果てて眠っている赤ちゃん。その姿の何と愛らしいことか。そっと口から離すと、また唇が刺激されたのか、小さく口を動かす。何もくわえてないのに。こんなことを思い起こすとき、「母性は女性に最初からあるものではなく、いろいろ体験してつくられていくものなんだな」 と、つくづく思う。

長男が2歳2ヶ月のとき生まれた次男は、甘え上手。
小6になった今ではさすがにしなくなったが、4年生くらいまでは、スキあらば座っている私の膝の上に乗ってきて、甘えていた。
そんな次男が幼稚園年中のとき、「甘え中」に「おっぱい吸わせて」と言ってきた。あら、今頃赤ちゃんがえりかしら?と思いながら 「いいよ」と応じてみた。
「おっぱい(母乳)出てくる?」 「さあね、出てくるかもよ」 ちょっと恥ずかしそうに吸い始めた。久しぶりの懐かしい感触に浸っていると、長男(小1)が少し離れたところで、なんとも言えない顔をしてこちらを見ている。ボクも行きたい、けど行けない、みたいな。
そうだ、この子はまだ自分がオムツをしていた赤ちゃんのときに、なぜか自分の意志にかかわらず「お兄ちゃん」になってしまったのだ。まだまだ甘えたい時期に、いつも「お兄ちゃん」として振舞うことを余儀なくされてきた。ママの目はどうしても自分より手のかかる、小さな弟に向けられるという事実を、幼いながら受け入れて生きてきたのだ。
とっさにそんなことを考えた。

「KOちゃんも来る?」と言ったら、こっくり、とうなづき、はにかんだ笑顔でやってきた。躊躇しながらも弟と同じことをしている。
私はまるでウシかウマかブタになった気分だった。

「やっぱり出ないや」と言って次男が離れたとたんに長男も離れた。どことなく満足そうだった。
母として二度とありえない経験のせいか、この出来事をよく覚えているのだ。

そして件の蜂クンは、今日もシュウメイギクをチュチュチュチュとやっていた。
そんなにシュウメイギクが好きなのね、一生懸命吸って栄養つけてね、と心の中でつぶやいた。そして「可愛かった時期の息子たち」を思い出させてくれてありがとう、とも……
by gbsatomi | 2004-11-05 01:10 | FLOWERS


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